新宿御苑の古いベンチに座っている。
中学生のときから敬愛する新海誠監督の作品の
シンボルであるドコモタワーに導かれ、
気がつくとそこに腰を下ろしていた。
背中から子供たちの歌声が聞こえる。
失っていたものを少しだけ思い出させる歌声。
やがてそれも桜の匂いに溶けていき、
つぎは何が聞こえてくるのかわくわくしていたが
実際に聞こえてきたのは入れ歯の手入れをどうし
ているのかというおばさん達の会話だった。
一度目を閉じて深呼吸。
なんでボクは東京にきたのかを想像してみる。
いろんな感情でごった返しになる。
そのまま暫く彷徨っていると、
遠くから聞こえる中央線の発車メロディに頭を小
突かれた。
いつのまにか寝ていたようだ。